鉢&田島征三・絵本と木の実の美術館

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2024.4.20(土)

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Tashima Seizo Picture book field

絵本のはらっぱ

ちからたろう

美術館では「ちからたろう」知ってる!という声がよく聞こえます。小学校の教科書に載ったからです。田島征三、20代の頃に描き世界的に評価された一冊。故・今江祥智との共作。

出版社
ポプラ社
作者
絵 田島 征三
発行年
1967年
価格
1,100円(税込)
その他
文 今江 祥智

「ちからたろう」は、昔話を再話(※)したものです。もとは岩手県の昔話と言われています。別名、「こんびたろう」。こんびとは、垢(アカ)のこと。インパクトのある構図と、土のにおいがするような描写は、一度見たら忘れない作品です。

長年、子どもがなかったおじいさんとおばあさんが、久しぶりに風呂に入って出た垢から人形を作ると、まんまを食べ出し…というはじまりです。
恐ろしい怪物を退治し、助けた娘と一緒になるというあらすじは、昔話ではよく耳にする流れです。
※再話:伝説や昔話を忠実に再現するのではなく、現在的な感覚も交えて文学として再現したもの

田島征三は、あとがきでこう述べています。
僕は、山奥で育ったので、子どものときから村の年よりたちの昔話をよくききました。
それは、いわゆるおとぎ話として絵本になっているものよりは、ずっとおもしろいし、幼い心をとらえるものでした。
子どもの絵本のおとぎ話がおもしろくないのは、そういう絵本をつくる人たちが、きっと、<子どものために>と考えすぎているからにちがいありません。けれども、そんなお子さま用のお上品な、気の抜けた魅力のない絵本は、害にも益にもならないのです。
在所の年取った百姓のじいさまやばあさまの、方言まるだしの昔話のなかには、わたしたちの祖先のバイタリティー(生命力)とユーモアがあふれています。

この絵本は、1969年ブラティスラバ世界絵本原画展で最高賞の「金のりんご賞」を受賞します。一気に名が世に出た田島征三のもとには仕事が殺到します。田島征三は直後、東京都の西多摩郡旧日の出村に引っ越し、半分農業、半分絵描きの生活を始めます。そしてやりたい仕事だけをやると決意します。

『ちからたろう』は、「絵本は、子どものために描いていません。商品ではなく、作品です。」という精神を貫く決心に至った、きっかけの絵本なのかもしれません。

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