鉢&田島征三・絵本と木の実の美術館

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2024.4.23(火)

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Tashima Seizo Picture book field

絵本のはらっぱ

しばてん

絵本作家として歩み出した田島征三が命を削って創り上げた、人間が読むべき作品です。

出版社
偕成社
作者
田島 征三
発行年
1971年
価格
1,430円(税込)

しばてん
しばてんは、むかし、土佐(今の高知県)にすんでいたといわれる妖怪。かっぱによくにているが、頭のおさらと、手足の水かきと、背中のこうらがない。すもうが好きで、人を見ると、すもうをしかけてくる、といわれていた。

絵本はハッピーエンドで終わるもの、というないようである常識をひっくりかえす一冊です。読み終わった後に、心の中に何かが残ります。それが一体何なのか、すぐには分かりません。あとがきで作者の田島征三が書いたように、子どもの時に読んだ「しばてん」という絵本のことを不意に思い出し、もう一度読み返し、また何年も経って思い出しというのを繰り返し、ようやく何かに辿りつくかもしれません。そのくらい、リトグラフの強い色彩と色面で表現された、しばてんやしばてんを取り巻く人間たちの姿が、頭に焼き付き離れません。絵本作家として歩み出した田島征三が命を削って創り上げた、人間が読むべき作品です。

<あとがき 田島征三>
人生を歩みはじめて間もない人たちが、鑑賞者であり、読者である絵本。ふかく考えれば考えるほど、絵本をつくる仕事に、思い責任を感じないわけにいきません。 絵本『しばてん』の中で、その責任を全身に感じながら、なおも、ぼくは、勇気をふるって、子どもたちにいろいろなことを話しかけようとしました。 おさない人たちが、ぼくのおしゃべりの中から、どれでも一つ感じとってくれたら、それだけで、ぼくの目的の一端は、はたせたことになります。 けれど、ぼくがひそかに期待していることは、子どもたちが、その成長の過程で、あるいは青年になってからでも、絵本『しばてん』が、かれらの心の中で発酵して、「ふっ」と、「あの絵本の作者がいおうとしたことは、このことだったのか!」と、心に沈んでくれることです。 この話は、ぼくのそだった土佐で、いまでも人びとにしたしまれているしばてんをモチーフにして、数年前に創作したものです。 美術大学を卒業するとき、ぼくは、この話を手刷りの絵本にしました。それは、不格好な絵本でしたが、こんど、おおくの方がたのご協力で、このようにちゃんとした絵本に生まれかわることができました。(原文まま)

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