やぎのしずかのしんみりしたいちにち
ヤギは何を考えているのでしょう。物思いにふけっていると、少し寂しげにも見えます。誰でも、心のちょっと深いところを考えたくなる瞬間、あると思います。
- 出版社
- 偕成社
- 作者
- 田島 征三
- 発行年
- 2015年
- 価格
- 1,430円(税込)
田島征三が描く、ヤギのしずかシリーズ絵本。「しずか」は、田島征三がかつて一緒に暮らしていたヤギの名です。めえめえと良く鳴くので、「しずかにしろ!」と言っていたら、いつのまにかしずかと呼んでいたというエピソードがあります。絵本と木の実の美術館で暮らしているヤギも、同じ名を付けました(お腹が空くと良く鳴きます)。
ヤギのしずかは、ともだちのナマズに「しんみり」という言葉を教えてもらいます。「しんみりってどういうことだろう」と不思議に感じます。語り掛けた蝉は、答えずに木から落ちて動かなくなり、誰にも気づかれない朝露が付いた美しい蜘蛛の巣に出会いました。その後出会った花になる前のつぼみを思わずぱくり。食べてしまってから、花になれなかったつぼみのことを思い、しずかは涙を流します。その内にうとうとして目を覚ますと、なにを考えていたのかをわすれてしまう、しずかでした。
しずかにとって「しんみり」が何か答えはでなくても、思う内に出会った出来事が普段とは違った見え方をしたのでしょう。その時間と夢うつつにしずかの上を吹き渡った風の心地よさに、しずかの心は深くなったように思えます。生命の静かな温もりを感じる、優しい空気に包まれた物語です。
兄弟絵本に『やぎのしずかのたいへんなたいへんないちにち』があります。
【関連する絵本】
▼ヤギが登場する絵本
≫『こやぎがめえめえ』
≫『やぎのしずかのたいへんなたいへんないちにち』
≫『こやぎがやってきた(ヤギのしずかシリーズ①)』